ソフトウェアのサブスクリプション化が進むSaaS市場における日本の主役たち
近年、ソフトウェアの利用形態がクラウド化されたSaaSモデルへと移行しています。従来のパッケージソフトとは異なり、SaaSではインターネット経由でアプリケーションを利用するため、場所を選ばず柔軟に利用できます。本記事では、日本国内で活躍するSaaSプロダクトを成長が高い順に紹介します。各サービスの特徴や強みについても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
SaaSが台頭してきた背景
SaaSが注目を集めるようになった背景には、以下の3つの要因が挙げられます。
1. 働き方の多様化
- リモートワークの浸透により、オフィスにいる必要がなくなった
- 従来の出社を前提とした業務スタイルからの転換が求められた
2.ビジネスモデルの多角化
- 社外の人材とのコラボレーションが増え、情報共有の重要性が高まった
- 従来の垂直統合型ビジネスからプラットフォーム型ビジネスへの移行が進んだ
3. 社会のデジタル化の加速
- オンラインサービスの利用が当たり前になり、デジタルリテラシーが向上した
- 政府主導でデジタル化が推進され、ペーパーレス化が進んだ
このように、社会全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、SaaSはその実現を支える重要な基盤となっています。
SaaSの4つの特徴
SaaSには以下の4つの特徴があります。
1. サブスクリプション課金モデル
SaaSでは、従量課金制やサブスクリプション(月額・年額)課金モデルが一般的です。つまり、ソフトウェアのライセンスを一括で購入する必要がなく、利用した分だけ支払えば良いのです。このため、初期投資を抑えられるメリットがあります。
2. 自動アップデート
SaaSベンダー側でソフトウェアの更新作業を行うため、ユーザー側では常に最新のバージョンを利用できます。手動でのアップデート作業が不要になり、運用コストを大幅に削減できます。
3. スケーラビリティの高さ
クラウド上でサービスが提供されるSaaSでは、ユーザー数の増減に合わせてリソースを柔軟に調整できます。企業の成長に合わせて簡単にスケールアップ/ダウンが可能なのが大きな利点です。
4. 高いカスタマイズ性
SaaSベンダーの多くは、APIを公開しています。このため、既存のシステムやサービスと連携させることで、カスタマイズされた環境を実現できます。組み込みの機能だけでなく、別のサービスとの組み合わせで高い拡張性を実現できるのがSaaSの強みです。
Salesforceなどの有名SaaSベンダーでは、AppExchangeと呼ばれるマーケットプレイスが用意されており、さまざまなアプリと連携できます。
日本国内の有力SaaSプロダクト11選
ここからは、日本国内で成長が著しいSaaSプロダクトを11つ紹介します。各サービスの特徴や強みについても解説しています。
1. Sansan
提供企業: Sansan株式会社
カテゴリ: CRM、名刺管理
累計導入社数: 8,000社以上
Sansanは、名刺データを一元管理し、営業活動を効率化するクラウドサービスです。AIによる名刺データ自動入力や、名刺データからの見込み客抽出など、営業DXを実現する機能が充実しています。
Sansanの主な特徴
- 高い名刺データ認識精度(98%以上)
- 名刺データと業務システムを連携して一元管理
- 自動化された名刺データ入力でデータ入力作業を削減
- AIによる見込み客抽出で営業活動を効率化
Sansanは、BtoBビジネスにおける名刺の重要性に着目し、その業務プロセスをデジタル化することで大きな付加価値を生み出しています。
2. freee
提供企業: freee株式会社
カテゴリ: クラウド会計ソフト
有料課金事業者数: 31万事業者以上
freeeは、中小企業向けのクラウド会計ソフトです。確定申告や給与計算、請求書発行など、経理・人事・労務関連の幅広い業務をサポートしています。
freeeの主な特徴
- 銀行口座やクレジットカードの取引明細を自動で取得し、仕訳処理
- スマホアプリで写真を撮るだけで領収書データを自動作成
- 専門家によるサポートで会計・税務の不安を解消
- 給与計算や労務管理など、経理関連業務を一元管理
経理の専門知識がなくても、フリーランスや個人事業主でも気軽に利用できるのがfreeeeの大きな強みです。確定申告から給与計算まで、バックオフィス業務全般をクラウド上で効率化できます。
3. kintone
提供企業: サイボウズ株式会社
カテゴリ: ビジネスアプリ開発プラットフォーム
導入企業数: 20,000社以上
kintoneはノーコードでビジネスアプリを開発できるクラウドプラットフォームです。データベース、ワークフロー、通知機能など、アプリ開発に必要な機能が簡単な操作で実装できます。
kintoneの主な特徴
- スプレッドシート形式の直感的なUIでアプリ開発が可能
- 豊富なテンプレートからアプリをサブスクで利用可能
- 他社クラウドサービスとのデータ連携に対応
- 高いセキュリティと運用管理機能を備える
IT人材不足に悩む中小企業でも、プログラミング未経験者でもkintoneを使えば、簡単に業務アプリを内製化できます。アプリ開発の民主化を実現するプラットフォームとして高い評価を得ています。
4. RAKUS CLOUD SERVICE
提供企業: 株式会社ラクス カテゴリ: バックオフィス業務支援
導入社数: 楽楽精算12,000社以上、楽楽明細6,000社以上
ラクスが提供するRACUS CLOUD SERVICEは、経費精算や請求書発行、従業員管理など、バックオフィス業務を効率化するクラウドサービスです。
RAKUS CLOUD SERVICEの主な特徴
- ペーパーレスで効率的な経費精算業務を実現
- インボイス制度への対応でスムーズな請求書発行が可能
- 労務管理業務のデジタル化による生産性向上
- AIチャットボットで営業活動もサポート
ラクスは、バックオフィス業務の課題に着目し、ペーパーレス化とデジタル化による業務改革を推進しています。経費精算から営業支援まで、幅広い機能をクラウド上で提供しています。
5. Chatwork
提供企業: Chatwork株式会社
カテゴリ: ビジネスチャット
導入企業数: 33万6,000社以上
Chatworkは、国内で最も普及しているビジネスチャットツールです。グループチャットやファイル共有、タスク管理など、チーム内のコミュニケーションとコラボレーションを強力にサポートします。
Chatworkの主な特徴
- 社外の人とも安全にグループチャットが可能
- 豊富なショートカットキーで効率的な操作性
- デスクトップアプリ、モバイルアプリに対応
- APIを公開しており、他サービスとの連携も可能
Chatworkはビジネスチャットのパイオニアとして、リモートワークの浸透に大きく貢献しています。国産ならではの使いやすさと拡張性の高さから、幅広い業種・業界で活用されています。
6. SmartHR
提供企業: 株式会社SmartHR
カテゴリ: 人事労務クラウド
導入企業数: 4万社以上
SmartHRは、入社手続きから労務管理、人事評価まで、人事労務業務全般をクラウド上で一元管理できるサービスです。
SmartHRの主な特徴
- 従業員情報の一元管理で人事データのデジタル化を実現
- 各種申請書のワークフロー化で承認業務を効率化
- 就業規則の電子化とタイムスタンプでコンプライアンス強化
- 豊富なAPIで他のHRテックサービスとも連携可能
SmartHRでは、人事労務業務のあらゆるプロセスをデジタル化し、生産性向上と業務品質の向上を両立しています。APIも公開しているため、人材マネジメントに特化したHRテックとの連携も可能です。
7. Salesforce
提供企業: Salesforce.com
カテゴリ: CRM
導入企業数: 15万社以上
Salesforceは、世界で最も普及しているCRMプラットフォームです。営業支援に加え、マーケティング、カスタマーサポート、アナリティクスなど、幅広い機能を提供しています。
Salesforceの主な特徴
- リードスコアリングによる優良リードの自動抽出
- AIによるリード獲得予測と次の最適アクション推薦
- 顧客データの一元管理と共有によるカスタマー視点の強化
- 豊富なアプリケーションとの連携でカスタマイズ性の高さ
Salesforceは、CRMの枠を超えたクラウドプラットフォームへと進化を遂げています。AIやIoTなどの最新テクノロジーと連携し、デジタルセールスを実現するソリューションを提供しています。
8. Slack
提供企業: Slack Technologies
カテゴリ: ビジネスチャット 有料ユーザー数: 1,700万人以上
Slackは、世界で最も普及しているビジネスチャットサービスです。スレッド機能やリアクション、検索機能が優れており、チームコラボレーションに最適です。
Slackの主な特徴
- チャンネル機能で効率的な情報共有が可能
- 過去のメッセージを容易に検索できる高い検索性
- ファイル共有、ビデオ通話、画面共有などの機能が充実
- 外部サービスとの連携で業務効率化も実現
Slackは、ビジネスチャットの域を超え、デジタルワークプレイスへと進化しています。API公開により、さまざまなSaaSとの連携で業務効率化を実現できるのが大きな強みです。
9. Dropbox
提供企業: Dropbox カテゴリ: クラウドストレージ
有料ユーザー数: 1,600万人以上
Dropboxは、パイオニア的存在のクラウドストレージサービスです。ファイル共有・同期に加え、コンテンツ管理やコラボレーションの機能が充実しています。
Dropboxの主な特徴
- 複数のデバイスでファイルを自動同期
- 過去のファイルバージョンを簡単に復元可能
- 共有リンクの作成でファイル共有が容易に
- ドキュメ ントプレビューやOffice文書の編集機能も備える
Dropboxは単なるクラウドストレージを超え、チームでのコンテンツ共有・コラボレーションを実現するプラットフォームへと進化しています。セキュリティ面での信頼性の高さも評価されています。
10. Microsoft 365
提供企業: マイクロソフト カテゴリ: オフィススイート 有料ユーザー数: 5億8,500万人以上
Microsoft 365は、WordやExcel、PowerPointなどのOfficeアプリに加え、メール、チャット、Web会議などの機能を統合したクラウドサービスです。
Microsoft 365の主な特徴
- Outlookを中心としたメール・予定表・連絡先の一元管理
- OneDriveでのファイル共有と同期
- Microsoft Teamsを使ったチャットとWeb会議
- セキュリティ対策とコンプライアンスの強化
Microsoft 365は、生産性向上とセキュリティ強化を両立したオールインワンのソリューションです。マイクロソフト製品との親和性が高く、企業のデジタル変革を強力に支援します。
11. Google ワークスペース
提供企業: Google カテゴリ: オフィススイート
有料ユーザー数: 800万以上の企業・団体
Google ワークスペースは、GmailやGoogleドライブ、ドキュメント編集ツールなどを統合したクラウドサービスです。コラボレーションとモビリティに優れています。
Google ワークスペースの主な特徴
- Gmail、カレンダー、ドキュメントなどを一元管理
- リアルタイムでのファイル共有・共同編集
- 場所を選ばずモバイルデバイスからもアクセス可能
- AI搭載で生産性向上と業務自動化を実現
Google ワークスペースは、優れたユーザビリティとAI機能で、リモートワークを強力にサポートします。G Suiteからの移行により、企業のデジタルトランスフォーメーションを後押ししています。
SaaSの今後の展望
以上、日本国内で注目を集めているSaaSプロダクトを11つ紹介しました。いずれのサービスも、業務のデジタル化とリモートワーク化を実現するソリューションとして、ユーザー企業の変革を強力に支援しています。
SaaSモデルの浸透により、ソフトウェアのライセンス購入から利用形態が大きく変わりました。企業はクラウド上のサービスを低コストで利用でき、場所を選ばずに最新の機能を活用できるようになりました。
一方で、SaaSベンダー側は継続的な収益が見込めるビジネスモデルとなり、ユーザーニーズに応じてサービスを進化させていく必要があります。SaaSプロダクトの機能拡張や、AIやIoTなどの新技術との連携によるイノベーションが今後さらに加速すると予想されます。
ユーザー企業とベンダー双方がWin-Winの関係を構築し、デジタルトランスフォーメーションを推進していくことが重要です。SaaSはそのプラットフォームとして、ビジネスの変革を続けていくことでしょう。